この映像のピーター・ハミルとはたくさんの音楽の仕事を一緒にやった。
1986年から1988年、そして1997から1999年。
毎年のように会っていた。
そして、彼の仕事の仕方や考え方からも多くの影響を受けた。
僕のプロデュースした、日本の箏の奏者、沢井一恵のCD『目と目』に収録されている僕の作曲『Song to Fallen Blossoms 』(散りゆく花の歌)では、このVan Der Graaf Generator のドラマー、ガイ・エヴァンスとも一緒にレコーデイングをした。
その音源はこの曲と似ている雰囲気を持っている。
それは、この映像の3人の内の2人が、その曲で大きな役目を持っていたということもあるかもしれない。
ドラムのオカズの入れ方もテンポも似ているところを感じさせる。
この映像は2010年のスタジオ・ライブの映像。
ジェネシス等の同年齢のグループとくらべると、今とっても元気なのが伝わって来る。
見ていて嬉しくなる。
この曲の歌詞を簡単に訳すと次の通りになる:
殺人者が私の中にいる
彼の存在は感じられる
時々、彼は浅い眠りにいる
静かな彼の部屋の中で
しかし、私の目が丸く見開いて、彼の目が私の目から飛び上がる時がある
彼は私の言葉で話し、心の中を刻んでいく
その通り
殺人者は生きている
天使たちが私の中で生きている
彼らの微笑みが感じられる
彼らは私を撫でて、私の心の嵐をなだめる
そして彼らの愛が私の痛みをいやす
彼らは私が落ちていく時にを見守っている
天使たちがいる限り、私はおさえられるだろう
どうしたら私は”自由”になれる
どうしたら救われる
”私”は私だろうか?
”私”は他人でもあるのだろうか?
そして、私も私の中に生きている
自分が何であるかが分からない時もある
私は英雄ではない
呪われている人ではないと願う
私は一人の人間
殺人者も天使たちも私と同じ
独裁者、救世主、
戦争と平和の亡命者
人間がこの世に生きている限り
存在し続ける
殺人者も天使たちも私
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この曲が作られてのは1970年頃。当時は学生運動や政治運動等が盛んで、西洋諸国,
日本や西側の多くの”インテリ”が中国の文化革命等、遠いエキゾチックな国に起きている事にユートピア風な理想主義的な夢を抱いていた。そうした人たちは、人間に間違った理想主義的な夢をみて、世の中の問題を独裁者や資本主義者のせいにしていた。この時期に、『殺人者は私の中にいる』、『独裁者、救世主、戦争と平和の亡命者、人間がこの世に生きている限り存在し続けている』、『殺人者も天使たちも私』と歌えるのは素晴らしい事だ。協会が持っている、いやす力があるような曲だ。レノンの『イマジン』よりも力強い感じがする。