人によっては多少衝撃的な内容かもしれませんが、今回、渋谷で上映されているスロヴェニアの哲学者スラヴォイ・ジジェクの映画『スラヴォイ・ジジェクの倒錯的映画ガイド2 倒錯的イデオロギー・ガイド』からの抜粋と解説を一つ紹介します。スラヴォイ・ジジェクはラカン派の心理学者で、ユーゴスラヴィアが崩壊した時に、スロヴェニアの初大統領として選挙に出ていた。ユーゴスラヴィアの共和国の中では、スロヴェニアは10日間の紛争の後に独立したが、スロヴェニアの南にあるクロアチア、そしてボスニアでは紛争は長く続いてしまった。同じスラブ人であって、共通の言葉も話す人々が多い地域だが、宗教や歴史による文化の違いもあり、民族浄化という強制的にその地域から排除しようとする政策が行った。その時にスラヴォイ・ジジェクはある民族浄化をやっている青年に、『なぜ、そのようなことをしているのですか?自由を求めていないのですか?』と聞いた。その青年は答えた『私たちの求めている自由は、君たちの言っている自由ではない。私たちの求めている自由は好きに女性をレイプして、拷問して、好きに殺す自由だ。』スラヴォイ・ジジェクは言うう『おそらく、イスラム国や様々な世界中のこうした軍団に聞いても彼らが素直に返答したら同じ返事が返ってくるだろう。』ジジェクが解説しているフランス革命の歴史番組でも、実際には政府を守る側に対して、このような行動に出た事件について語っている。これはフランス革命以後も、2011年のアラブの春でも同じだった。
そこで、ジジェクは、紛争中の民族浄化で組織的強姦、強制妊娠にあった多くの女性たちはどうなったのだろうか?、と言う。彼女たちは、紛争中では、がんばって生き残って、世間に自分たちにあったことを訴えるのだと信じて生きていた。しかし、紛争が終わると、彼女たちはジョークのネタにされて、世間からは隠され、多くの女性たちは自殺してしまったのです。そして、世界はそれを恥ずかしいものとして隠して、事件を消してしまったのです。
ジジェクは心理学者として、人間がどういった状況になると、どのようになるかを分析している。この映画では、上記の解説は、デイヴィッド・リーンの監督した1945年のロマンス映画『逢びき』の抜粋を見せた後で、ラカン派の語るThe Big Other(「大他者」)の解説として話している。
ジジェクはよく語っている”There is no coffee without caffeine” (”カフェインなしのコーヒーはないのです。”)つまり、血まみれな暴力にならない革命はないのです。2011年に”アラブの春”がシリア、リビヤ、エジプトに起きた、その後がどうなるかが問題なのです、とよくシジェックは語っていた。そして、それは世界のどこにでも、人間がいるところには言えることだ。